SAP_Service解説

SAP Service

サービス管理モジュール 解説ガイド

Customer Service / After-Sales Management — Implementation Guide

2026年6月

第一章:SAP Serviceの全体像と役割

Serviceモジュールの役割と位置づけ

SAP Service(旧称:CS=Customer Service)は、製品の販売後に発生するアフターサービス業務を統合管理するモジュールです。顧客からのサービス依頼受付・修理指図の作成・部品消費・工数記録・請求書発行まで、フィールドサービスの全サイクルをSAP上で一元管理します。S/4HANAでは「SAP Service」として再設計され、リアルタイム原価追跡・モバイル対応・AI活用が強化されています。

サービスビジネスには「製品を売った後が本番」という特性があります。機器の稼働率保証・SLA(サービスレベル合意)対応・予防保全・交換部品の手配まで、製造業・機械メーカー・医療機器・ITインフラ企業にとってサービス事業の収益化は経営課題です。SAP Serviceはこれらを製造(PP)・購買(MM)・財務(FI/CO)・販売(SD)と統合し、サービス業務を収益源として可視化します。

SAP Serviceが関わる主要な業務シナリオ

・サービス通知受付:顧客からの故障連絡・修理依頼・クレームをシステムに記録

・サービス指図実行:修理・定期保全・設置工事の指図作成・部品手配・工数記録

・保守契約管理:定額・従量・SLA型の保守契約と定期請求の自動化

・保証管理:製品保証期間内の無償修理と有償修理の自動判定

・リソース関連請求:実作業時間・使用部品・交通費を積み上げた実費請求

・予防保全計画:時間基準・稼働カウンタ基準の定期保全スケジュール自動生成

他モジュールとの統合関係

連携モジュール統合内容代表的なデータフロー
SD(販売)サービス指図の請求をSDの販売伝票経由で発行 DIP Profile(動的品目処理)で実費を請求行へ変換サービス指図→DP90→SD請求依頼→VF01請求書
MM(購買・在庫)サービス指図からの交換部品の消費(在庫払出) 外注修理のサービス購買IW31指図→MIGO払出(移動タイプ261) 外注→MM発注書→入庫→請求
PM(プラント保全)CSとPMは技術的に同一基盤(通知・指図・機器マスタ共有) CSは顧客所有機器、PMは自社所有設備を対象機器マスタ・機能的場所を共有 指図タイプでCS/PMを識別
FI(財務会計)サービス指図の実績費用がFI仕訳を自動生成 SD請求書がAR/売上仕訳を生成部品払出→BSX/GBB仕訳 請求書→売掛金/売上高仕訳
CO(管理会計)サービス指図は内部指図と同様に原価集計オブジェクト 実際原価(部品+労務費+外注費)をリアルタイム追跡指図別原価レポート(IW39) KOB1/KOB2で実績/計画比較
QM(品質)修理結果の品質記録・不具合原因コードの管理 品質通知とサービス通知の連携品質通知(M2)とサービス指図の紐付け 不具合コード・原因コード体系

仕訳の自動生成・在庫移動・ワークフロー

SAP Serviceの各業務トランザクションは、在庫移動とFI仕訳を自動生成します。「サービス指図への部品払出」「外注費の計上」「SD請求書への連携」が主要な仕訳トリガーです。またサービス通知・指図のステータス変更はワークフローと連動し、担当者への自動タスク通知・エスカレーション管理を行います。

業務ステップ在庫移動タイプ自動生成されるFI仕訳
サービス指図への交換部品払出 (MIGO / IW31材料コンポーネント)261(指図払出)仕掛品/費用(GBB-VBR) ← 部品在庫(BSX)
外注修理費の計上(MIRO)在庫移動なし外注費用(指図への転記) ← 買掛金(KBS)
修理完了品の入庫(自社修理)101(修理品入庫)修理在庫(BSX) ← 指図原価(PRD差異)
DP90 リソース関連請求在庫移動なしSD販売伝票(請求依頼)を生成→VF01で 売掛金(FI-AR) ← 売上高(FI-CO-PA)
保守契約の定期請求(VA41)在庫移動なし定期的にSD請求書を自動生成 売掛金 ← 役務提供売上
指図決算(KO88)在庫移動なし指図費用残高を原価センタ/WBS/収益勘定へ精算
ワークフロー:サービス通知・指図・契約の承認制御

【サービス通知のWF】

・通知起票(IW21)→優先度に応じた担当者への自動タスク割当(Fiori通知)

・SLA管理:契約で定めた応答時間(Response Time)・解決時間(Resolution Time)を超過した場合に自動エスカレーション

・通知完了:是正処置完了後に担当者が「完了」クローズ→上長の最終承認WF

【サービス指図のWF】

・指図作成(IW31)→技術者へのタスク自動割当(フィールドサービスディスパッチ)

・外注発注承認:指図から外注MM発注書を生成する際に購買承認WFが起動

・指図クローズ:技術者が完了確認→管理者承認→DP90請求依頼生成のWF

【保証判定のWF】

・通知受付時に機器マスタの保証期間を自動照会

・保証内→無償処理(ワランティ指図タイプ)

・保証外→有償指図へ自動切替(顧客への見積承認WFを挿入可能)

第二章:マスタデータ

機器マスタ(Equipment Master)

機器マスタはサービス対象となる個々の機器(シリアル管理された製品)を管理するオブジェクトです。機器番号はシリアル番号と紐付き、顧客への納入履歴・設置場所・保証期間・修理履歴をすべて機器単位で管理します。製造業では出荷した機器を機器マスタで追跡し、「どの機器が、どの顧客の、どの拠点に設置されているか」を把握します。

機器マスタの主要項目内容・用途
機器番号内部管理番号(SAP採番またはシリアル番号と1:1紐付け)
機器カテゴリ機器の種類を分類(例:M=機器/I=計装/F=プラント設備)
シリアル番号製品の個体識別番号。品目マスタとの紐付けで型番管理
機能的場所(FLOC)機器が設置されている場所(工場/建物/ライン)の階層構造
顧客(得意先)機器を所有・使用する顧客(ビジネスパートナー)
保証情報製品保証の種類・開始日・終了日。通知受付時に自動照会
稼働カウンタ稼働時間・走行距離など定期保全のトリガーとなる数値
取得価格・取得日資産管理(AA連携)に使用。リース機器の管理にも活用

機能的場所(Functional Location)

機能的場所(FLOC)は機器が設置される物理的・機能的な場所の階層構造です。「工場-建屋-ライン-ユニット」のような階層で場所を管理し、機器をその場所に取り付け(Install)/取り外し(Dismantle)することで設置履歴を管理します。顧客先の複数拠点を管理する場合は「顧客-事業所-フロア-設備番号」という顧客視点の階層で定義します。

サービスBOMとタスクリスト

マスタデータ概要主な用途
サービスBOM (材料リスト)修理・保全に必要な部品・消耗品のリスト 機器カテゴリや機器単位で定義サービス指図へのコンポーネント自動セット 部品費用の見積
タスクリスト (General Task List)標準作業手順のテンプレート 作業内容・標準工数・必要部品を定義定期保全や修理指図への作業内容自動展開 作業時間の標準値管理
保証マスタ保証種別(製品保証/延長保証/SLA)と 保証期間・対象範囲を定義通知・指図作成時の保証判定自動化
サービス製品 (Service Material)役務提供を品目として管理(無形品目) SD販売可能・請求ベースとなる役務単価DP90でのリソース→請求行変換に使用 時間単価・部品単価の定義
カウンタ定義機器の稼働カウンタ(時間/距離/回数)を定義 実績値の定期入力または自動取得(IoT連携)定期保全計画のカウンタベーストリガー

第三章:サービス通知(Service Notification)

サービス通知の概念と種類

サービス通知(IW21/IW51)は顧客からの問い合わせ・故障報告・修理依頼・クレームを受け付ける最初の窓口です。通知タイプによって処理フローが異なり、緊急度・SLA・保証判定が通知時点で自動確認されます。通知は単独で完結することもありますが、多くの場合はサービス指図(修理実行)を作成するトリガーとなります。

通知タイプ用途後続処理
S1 サービス活動 (Service Activity)定期訪問・予防点検・インストール など計画的なサービス活動の記録サービス指図(SM01/SM03)の作成
M1 修理依頼 (Malfunction Report)顧客からの故障・修理依頼 機器の停止・誤動作の報告故障時間の記録 サービス指図(SM02)の作成
M2 品質通知(CS) (Quality Notification)製品クレーム・品質問題の記録 QMモジュールと連携8Dレポート・是正処置(CAPA) 仕入先への品質問題フィードバック
A1 活動レポート (Activity Report)完了したサービス活動の事後記録 フィールドエンジニアの日報的利用DP90での請求(実費精算) 機器の稼働記録更新

サービス通知の処理フロー

通知受付から指図作成までの標準フロー

Step 1:通知受付(IW21 / Fiori:Create Service Notification)

・得意先・機器番号・故障現象・優先度(緊急/通常/低)を入力

・保証判定:機器マスタの保証情報を自動照会→有償/無償を判定

・SLA確認:保守契約の応答時間・解決時間を自動表示

Step 2:診断・原因コード入力

・故障コード・原因コード・処置コードの記録(コードセット)

・類似案件の過去修理履歴をシステムで参照

Step 3:サービス指図への変換

・「指図作成」ボタンでサービス指図を自動生成(通知-指図の紐付け)

・タスクリストから標準作業・部品を自動展開

Step 4:通知クローズ

・指図完了確認後に通知を「完了」ステータスへ変更

・顧客満足度調査のトリガー(Fiori連携)

SLA(サービスレベル合意)管理

保守契約にSLAを設定することで、応答時間(Response Time)・修理完了時間(Resolution Time)をシステムが自動監視します。通知受付から所定時間を超過するとエスカレーション通知が自動送信され、サービスマネージャーへのタスクが起動します。SLA超過はサービスレポートで集計され、契約更新交渉やサービス品質改善のKPIとして活用されます。

第四章:サービス指図(Service Order)

サービス指図の概念と指図タイプ

サービス指図(IW31/IW32 または SM01)は修理・保全・設置などのサービス作業を実行するための中心伝票です。作業内容・担当技術者・必要部品・作業時間・費用の計画と実績を1つの指図番号で管理します。指図は原価集計オブジェクトとしても機能し、CO(管理会計)に直接連携します。

指図タイプ用途・特徴
SM01 (修理依頼指図)顧客の修理依頼に基づく修理作業 通知から自動生成されることが多い 有償・無償どちらにも対応
SM02 (ワランティ指図)保証期間内の無償修理専用指図タイプ 費用は売上原価として計上(顧客請求なし) 保証コスト分析に活用
SM03 (サービス活動指図)定期点検・予防保全・設置工事の指図 保全計画(IP01)から自動生成可能
SM04 (保守指図)顧客所有機器の保守・運用支援 保守契約に紐付けた継続的作業管理

サービス指図の主要操作

操作フェーズ主要トランザクション・操作内容
指図作成IW31:指図タイプ・機器・通知・作業内容を入力 タスクリストから作業(Operation)・部品(Component)を自動展開 費用計画(工数×レート・部品単価)を自動計算
技術者割当・ディスパッチ指図の作業をフィールド技術者へ割当 Fiori Launchpad:Technician Dispatchingで地図上表示・最適割当 モバイル(SAP Field Service Management連携)で技術者へ送信
部品消費(在庫払出)MIGO または指図画面から部品を払出(移動タイプ261) 在庫引当:計画部品を指図に対して在庫引当(Reservation) 外注部品:MM購買依頼を自動起票し入庫後に指図へ計上
工数確認(作業時間記録)IW41(個別確認)/ IW42(集合確認):技術者が作業時間・完了数量を入力 Cross-Application Timesheet(CAT2)でも入力可能 確認と同時にCO側へ実績費用として自動転記
外注処理指図の外注作業オペレーションからMM購買依頼を自動作成 外注先から入庫・MIRO請求照合で指図へ費用計上
指図完了・技術完了IW32:TECO(Technical Completion)ステータスに変更 以降は費用の追加計上が不可(在庫払出もブロック) DP90での請求依頼作成が可能になる
指図決算(精算)KO88:指図の残原価を原価センタ・収益勘定へ精算 無償修理:費用を保証費用勘定へ振替 有償修理:DP90請求後に残差異を精算

リソース関連請求(DP90 / DIP Profile)

サービス指図の実際費用(部品費・労務費・外注費・交通費)を顧客への請求書に変換する仕組みが「リソース関連請求(Resource-Related Billing)」です。DIP Profile(Dynamic Item Processor Profile)は、指図の費用カテゴリごとに「どのSDの品目・請求条件に変換するか」を定義します。DP90(請求依頼の作成)を実行することで、指図の実績費用がSD販売伝票(請求依頼)の明細行に展開され、VF01で請求書を発行します。

DP90 リソース関連請求の実行例

サービス指図 #1000123の実績費用(例):

部品費:交換フィルタ ×3個 × 2,500円 = 7,500円

労務費:技術者 4時間 × 8,000円/時 = 32,000円

交通費:出張費 1式 = 15,000円

外注費:校正作業 委託 = 50,000円

────────────────────

合計請求額:104,500円

DP90実行 → DIP Profileが各費用を以下に変換:

部品費 → SD品目「SRV-PARTS」/ 請求条件PR00で単価換算

労務費 → SD品目「SRV-LABOR」/ 時間単価×実績時間

外注費 → SD品目「SRV-SUBCON」/ 実費パススルー

→ VF01で顧客請求書(F2)を発行

→ FI仕訳:売掛金 104,500 ← 役務売上高 104,500

第五章:サービス契約(Service Contract)

保守契約の種類と管理

サービス契約(VA41で作成するSD契約)は、顧客と締結する保守サービスの長期契約をシステム上で管理します。契約期間・対象機器・サービス内容・SLA・料金体系を定義し、定期請求・保証判定・保全計画のベースラインとして機能します。

契約タイプ料金モデル特徴・適用ケース
定額保守契約 (Fixed-Price Contract)月額/年額固定料金機器の定期点検・24時間対応保証 障害件数に関わらず一定料金 IT機器・医療機器・産業機械向け
従量課金契約 (Time & Material Contract)実際工数+使用部品の実費精算DP90リソース関連請求と組み合わせ 作業ごとに実費を顧客請求 スポット修理・中小規模顧客向け
数量契約 (Quantity Contract)サービス単位(訪問回数・時間)を あらかじめ購入する方式年間訪問10回・サポート時間100時間など 使用のたびに契約残高を消込
SLA付き保守契約応答時間・復旧時間保証付きの契約 違反時のペナルティ(サービスクレジット)管理ミッションクリティカル設備向け SLAブリーチの自動検知と通知

定期保全計画(Maintenance Plan)

保全計画(IP01)は、機器に対して定期的にサービス指図・サービス通知を自動生成する仕組みです。時間ベース(3ヶ月ごと)・カウンタベース(稼働1,000時間ごと)・組み合わせ(どちらか先)のトリガーを設定でき、IP10(保全計画のスケジュール)を実行すると期限到来した保全作業の指図が一括自動生成されます。

保全計画の設定項目内容
計画タイプ時間ベース(Time-Based):カレンダー日付で周期を定義 カウンタベース(Performance-Based):機器稼働数値で周期を定義
周期保全作業の実施間隔(例:3ヶ月ごと・走行10,000kmごと)
実施タイミング早期実施許容期間・遅延許容期間の設定(ウィンドウ管理)
生成オブジェクトサービス指図 / サービス通知 / PM指図のいずれかを自動生成
タスクリスト参照保全作業内容(作業手順・標準工数・部品)を自動展開
請求設定保守契約との紐付け(定期保全費用を契約料金に含むか否か)

契約ベース定期請求

定額保守契約の月次請求は、SD契約の請求計画(Billing Plan)により自動化できます。月初に自動で請求依頼(Billing Request)が生成され、VF04(請求実行)により月次請求書が一括発行されます。顧客ごとに請求日・請求通貨・送付先を契約に設定するため、大量の保守契約を持つ企業でも請求業務を大幅に自動化できます。

第六章:End-to-Endトランザクション操作ガイド

シナリオ①:顧客クレームから修理完了・請求まで(有償修理)

標準有償修理フロー(Order-to-Cash for Service)

Step 1:サービス通知受付(IW21)

→ 得意先「東西機器株式会社」、機器#EQ-00045(コンプレッサー)、故障現象:異音

→ 保証照会:保証期限 2024年3月(期限切れ)→ 有償修理に確定

→ 保守契約#SC-1234(定額契約)に含まれる修理か確認→含まれない→都度請求

Step 2:サービス指図作成(IW31)

→ 指図タイプ SM01、通知#から自動生成

→ タスクリスト参照:標準修理手順・部品リスト自動セット

→ 費用計画:部品15,000円 + 工数4h×8,000円 = 47,000円

Step 3:部品引当・払出(MIGO)

→ コンプレッサーベアリング×1(在庫払出)

→ 仕訳:仕掛品(GBB-VBR)15,000 ← 部品在庫(BSX)15,000

Step 4:現地作業・工数確認(IW41)

→ 技術者が現地修理完了後にIW41で実績工数4.5hを入力

→ CO:指図に実績費用(労務費36,000円)が自動転記

Step 5:指図技術完了(IW32→TECO)

→ テクニカルクローズ後、請求依頼作成が可能に

Step 6:DP90 リソース関連請求依頼作成

→ 実績費用(部品15,000+労務36,000+交通費5,000)をSD販売伝票明細へ変換

Step 7:請求書発行(VF01)

→ 顧客請求書 #9000234:56,000円(税別)

→ FI仕訳:売掛金 56,000 ← 役務売上高 56,000

シナリオ②:定期保全計画に基づく予防保全(定額契約)

保全計画→指図自動生成→実施→契約請求フロー

Step 1:保全計画スケジュール実行(IP10)

→ 3ヶ月ごとの定期点検期限が到来した機器を一覧表示

→ 「生成」実行で対象機器の SM03指図を一括自動作成

Step 2:指図の確認・作業割当(IW38 指図プール)

→ 生成されたSM03指図一覧からフィールド技術者へ自動割当

→ スケジュールカレンダーに点検日を登録

Step 3:点検実施・チェックリスト記録(IW41)

→ 技術者がモバイルから作業実績・点検結果を入力

→ 定期点検の費用は保守契約料金に含まれているため顧客請求なし

Step 4:定額月次請求(自動)

→ 保守契約の請求計画により月初に請求依頼を自動生成(VA41参照)

→ VF04一括請求実行でインボイス発行

→ 月額保守料 100,000円×12ヶ月 = 年間 1,200,000円

Step 5:指図決算(KO88)

→ 指図費用(定期点検工数・消耗品)を保全費用勘定へ精算仕訳

第七章:主要トランザクション一覧

カテゴリトランザクション機能
通知IW21サービス通知の作成
通知IW22サービス通知の変更
通知IW23サービス通知の表示
通知IW28サービス通知リスト(担当者別・優先度別)
指図IW31サービス指図の作成
指図IW32サービス指図の変更
指図IW38サービス指図プール(一覧表示・割当)
指図IW39指図別費用レポート(計画/実績/差異)
指図確認IW41個別実績確認(工数・完了数量)
指図確認IW42集合実績確認(複数指図)
請求DP90リソース関連請求依頼の作成(指図→SD)
請求VF01請求書の個別作成
請求VF04請求書の一括実行(月次)
契約VA41サービス契約の作成
契約VA42サービス契約の変更
保全計画IP01保全計画の作成
保全計画IP10保全計画スケジュール実行(指図一括生成)
機器IE01機器マスタの作成
機器IE02機器マスタの変更
機器IH01機能的場所の作成
レポートIW70サービスコストレポート(機器/顧客別)
レポートIW65顧客別機器一覧・修理履歴

第八章:SPROコンフィグレーション詳解

8.1 基本設定

設定項目SPROパス内容
通知タイプ定義SM→サービス処理→通知→ 通知タイプS1/M1/M2等の通知タイプを定義 優先度・SLA・コードグループを割当
指図タイプ設定SM→サービス処理→指図→ 指図タイプSM01/SM02/SM03/SM04の 原価集計・決算・番号範囲を設定
DIP Profile設定PS/CS→請求→DIPプロファイル費用カテゴリ→SDサービス品目への 変換ルールを定義(DP90の核心設定)
保証カテゴリSM→保証設定製品保証・延長保証の期間・対象範囲 有償/無償判定ロジックの設定
保全計画カテゴリPM/CS→保全計画→計画カテゴリ時間ベース/カウンタベース保全計画 の周期・許容ウィンドウを設定
コード設定SM→通知→コード故障コード・原因コード・処置コードの カタログを業界・機器タイプ別に定義

8.2 請求統合の設定(SD連携)

サービス指図の費用を顧客請求書に変換するには、SD側の勘定決定(VKOA)・条件技術(Pricing)とCSのDIP Profile設定を連携させる必要があります。DIP Profileでは「CS指図の労務費カテゴリ」を「SDサービス品目SRV-LABOR」に変換し、そのSDサービス品目の価格条件(PR00)で顧客単価を決定します。この設定により、技術者が工数を入力した時点で請求額が自動計算されます。

8.3 フィールドサービス連携設定

S/4HANAではSAP Field Service Management(FSM)との統合が強化されています。SPROでFSM連携を設定することで、SAP ServiceのサービスCall(通知・指図)がFSMのディスパッチ管理画面に自動連携され、フィールド技術者のモバイルアプリへ作業指示が送信されます。作業完了時にモバイルから入力した内容がSAP Serviceの工数確認に自動反映されます。

第九章:導入事例

事例1:産業機械メーカーA社 — アフターサービスの収益化と請求自動化

A社(工作機械メーカー)は顧客のサービス拠点が全国300拠点以上あり、修理対応を紙の作業報告書で管理していた。月末に報告書を集計して請求書を手作成するため、請求漏れ・遅延が慢性化していた。SAP Serviceの導入により、技術者がモバイルで作業時間・使用部品をリアルタイム入力→DP90で自動集計→月次一括請求を実現。

導入前の課題導入後の効果
修理報告書が紙管理で集計に1週間技術者モバイル入力→当日中に費用確定
請求漏れ年間推計3,000万円DP90自動集計で請求漏れゼロ
機器の修理履歴がバラバラに管理機器マスタで全修理履歴を一元管理
保証内外の判定が担当者の記憶頼り保証マスタで自動判定→無償/有償を即時決定
保守契約の更新タイミングを見落とし契約満了アラートで更新機会を確実に把握

事例2:医療機器メーカーB社 — 保守契約SLA管理とGxP対応

B社(医療診断機器メーカー)は病院向けMRI・CT装置の保守契約を全国500台管理。医療機器は稼働停止が患者の診断に直接影響するためSLAが厳格(4時間以内応答・24時間以内復旧)。SAP Serviceで通知受付時のSLA自動監視・エスカレーションWFを構築し、SLA遵守率を91%→99%に改善。また修理記録を電子化して規制当局への修理記録提出をワンクリックで対応できるようにした。

医療機器特有の要件SAP Serviceでの対応
4時間以内応答SLA通知受付時からカウントダウン 残時間が30分以下でマネージャーへ自動エスカレーション
修理記録の監査証拠指図・確認・DIP請求の全履歴がSAP上に電子保存 機器番号・技術者・日時・作業内容の証跡
予防保全による稼働率保証カウンタベース保全計画で稼働時間1,000時間ごとに 自動で予防保全指図を生成・技術者へディスパッチ
交換部品の品質追跡部品バッチ管理(QM連携)で使用部品のロット・ メーカーを修理記録と紐付けて管理

事例3:ITインフラ企業C社 — フィールドサービスのデジタル化とコスト可視化

C社(サーバー・ネットワーク機器のSIer)は全国100名のフィールドエンジニアを抱えるが、技術者の稼働状況・指図の進捗・収益性がリアルタイムに把握できていなかった。SAP Service + SAP Field Service Management(FSM)の統合導入により、技術者の稼働状況・移動・作業進捗をリアルタイム可視化。サービスコストと顧客別収益性の分析により、採算の悪い契約の見直し・単価改定を実現し、サービス事業のEBIT率を4%→11%に改善。

第十章:SAP Service でできること ── 主要機能と操作

SAP Service(CS)は単なる修理管理ツールではなく、アフターサービスを「収益事業」として運営するための統合プラットフォームです。以下に、業務担当者が「このシステムで実際に何ができるか」を機能別に整理します。

①サービス通知・SLA管理でできること

・顧客からの故障/修理依頼をIW21またはFioriアプリで即時受付・番号採番

・保証マスタ照会:機器番号を入力した瞬間に保証期限・対象範囲を自動表示

・SLAタイマー:通知受付時刻から応答/復旧の制限時間をカウントダウン表示

・自動エスカレーション:SLA残時間が設定値以下になると上長へ自動通知

・類似案件検索:過去の同一機器・同一故障コードの修理履歴を瞬時に参照

・顧客ポータル連携(Fiori):顧客自身がWebから修理依頼・進捗確認が可能

②サービス指図・フィールドサービスでできること

・タスクリストから標準作業手順・部品リストを自動展開(入力工数の大幅削減)

・フィールドエンジニアへの指図割当:スキル・拠点・空き時間を考慮した自動割当

・モバイル作業:技術者がスマートフォンで作業確認・部品消費・写真添付・電子サイン

・部品在庫引当:指図確定時点で必要部品を倉庫在庫に自動引当(欠品防止)

・外注管理:指図から外注MM発注書を一クリック生成→入庫・請求まで一貫管理

・リアルタイム原価追跡:部品払出・工数確認のたびにCO指図残高を自動更新

③請求・契約管理でできること

・DP90リソース関連請求:指図の実績費用(部品+工数+外注+交通費)を

顧客別単価条件で自動計算→SD請求書に1クリックで変換

・定額契約の自動月次請求:保守契約の請求計画で毎月自動で請求依頼生成

→VF04一括実行で数百枚の請求書を同時発行

・保証コスト分析:無償修理(ワランティ)の費用を機器タイプ・仕入先別に集計

→製品品質問題の特定・仕入先へのペナルティ請求根拠として活用

・契約採算分析:契約別の売上(定額料金)vs原価(修理費用)を月次レポート

→採算割れ契約の料金改定・サービス範囲見直しの根拠データ

④予防保全・機器管理でできること

・時間ベース/カウンタベース保全計画:設定した周期で定期保全指図を自動生成

→担当技術者へ自動割当まで「ゼロタッチ」で実現

・機器ライフサイクル管理:取得→設置→修理→部品交換→廃棄を1機器番号で追跡

・稼働カウンタ管理:現地確認値またはIoTセンサーからカウンタ値を自動更新

→「稼働1,000時間ごとにオイル交換」のような保全を自動スケジューリング

・修理履歴分析:機器別の修理回数・修理コスト・MTBF(平均故障間隔)を

レポート化し、更新投資判断・保証設計の見直しに活用

以上