SAP_QM解説

SAP QM(品質管理)総合解説

Quality Management:品質計画・検査実行・結果記録・品質通知・SPC・SPROコンフィグ全解説

2026年6月

第一章:SAP QMの全体像と他モジュールとの連携

QM(品質管理)の役割

SAP QM(Quality Management)は「製品・材料・プロセスの品質をサプライチェーン全体にわたって計画・実行・記録・分析する」モジュールです。ISO 9001・FDA 21 CFR Part 11・GMP等の国際品質規格への対応、検査ロットの管理、サプライヤー品質評価、工程内品質管理(SPC:Statistical Process Control)が主な機能領域です。

QMは業務フローの複数ポイントに品質ゲートを設けます。「受入検査(調達品)→工程内検査(製造中)→最終検査(出荷前)→顧客クレーム対応」の各段階でQMが機能します。

QMが関わる主要な業務シナリオ

・調達品受入検査(QM in Procurement):仕入先からの品物到着時に検査ロット自動作成

・製造工程内検査(QM in Production):製造指図に連動した工程内品質チェック

・出荷前最終検査(QM in Sales):顧客出荷前の製品検査

・品質通知(Quality Notification):不良発生時のクレーム・是正処置管理

・SPC(統計的工程管理):管理図による工程能力のリアルタイム監視

他モジュールとのインターフェース

QMの基本概念:検査ロットと使用判定

検査ロット(Inspection Lot)はQMの中核オブジェクトです。「特定の品目×特定の数量×特定の契機(入荷・製造指図・出荷等)」に対して一つの検査ロットが作成され、そのロットに対して「検査計画の割り当て→結果記録→使用判定」の3ステップが実施されます。

第二章:QMマスタデータ

品目マスタ:QMビュー

操作イメージ:MM01/MM02 品目マスタQMビューの設定

検査計画(Inspection Plan)

検査計画(Inspection Plan)は「何を・どのように・いくつ検査するか」を定義するQMの中心マスタです。製造のルーティング(CA01)と同様の構造を持ち、「オペレーション(検査工程)→特性(検査項目)」の階層で定義されます。

操作イメージ:QP01/QP02/QP03 検査計画の作成・変更・表示

サンプリング手順

操作イメージ:QDV1/QDV2 サンプリング手順の作成・変更

品質情報レコード(QIR)

操作イメージ:QI01/QI02/QI03 QIRの作成・変更・表示

第三章:検査タイプと検査ロット

主要な検査タイプ一覧

検査タイプ(Inspection Type)は「どの業務契機でQMの検査ロットを自動作成するか」を制御するキーです。品目マスタのQMビューで検査タイプごとにアクティブ/非アクティブを設定します。

検査ロットの照会

操作イメージ:QA33 検査ロットの照会・一覧表示

操作イメージ:QA03 検査ロットの詳細表示

第四章:検査結果の記録

結果記録の操作

操作イメージ:QE51N 複数特性の結果記録(推奨)

操作イメージ:QE01 単一オペレーションの結果記録

操作イメージ:QE71 サンプル結果からロット結果を自動集計

検査機器のキャリブレーション管理

検査結果の信頼性を担保するため、使用する測定機器(ノギス・マイクロメータ・圧力計等)の定期校正をQMで管理します。

操作イメージ:QM13 検査機器のキャリブレーション管理

第五章:使用判定と在庫転記

使用判定(Usage Decision)

操作イメージ:QA11 検査ロットの使用判定

使用判定後の在庫転記

操作イメージ:QA16/QA40 使用判定の一括処理

第六章:品質通知(Quality Notification)

品質通知の概念と種類

品質通知(Quality Notification)は「品質問題(不良・クレーム・是正要求)の発生から解決までの一元管理ツール」です。不良品の発見・顧客クレームの受付・社内品質問題の報告をシステムに記録し、原因分析・是正処置・予防処置(CAPA:Corrective and Preventive Action)を管理します。

操作イメージ:QM01/QM02/QM03 品質通知の作成・変更・表示

操作イメージ:QM13 品質通知の進捗管理レポート

仕入先評価との連携

操作イメージ:ME61/ME63 仕入先評価

第七章:統計的工程管理(SPC)

SPC(Statistical Process Control)の概要

SPC(統計的工程管理)は「管理図(Control Chart)を用いて製造工程の変動を継続的に監視し、品質問題が大きな不良を引き起こす前に早期検知する」品質管理手法です。SAP QMはSPC機能を標準で提供しており、検査結果データから管理図を自動生成します。

管理図の設定と閲覧

操作イメージ:QGC1 SPC管理図の設定

操作イメージ:QGP1 SPC管理図の表示

工程能力指数(Cpk)の管理

QMは検査結果の統計処理として「工程能力指数(Cp・Cpk)」を自動計算します。Cp(工程能力)=(USL-LSL)/(6σ)、Cpk(工程能力指数)=min[(USL-μ)/3σ,(μ-LSL)/3σ]。

第八章:品質証明書(Certificate of Analysis)

CoAの自動生成と送付

品質証明書(Certificate of Analysis:CoA)は「仕入先または自社からの製品出荷時に、検査結果データを記載した品質証明書を自動生成する」機能です。医療機器・食品・化学品等の業界では法規制・顧客要求として必須です。

操作イメージ:QC01/QC12 CoAテンプレートの設定

操作イメージ:QC21 CoAの印刷

第九章:SPROコンフィグレーション詳解

QM基本設定

検査タイプ設定

サンプリングと動的変更

通知設定

QMと他モジュールの連携設定

第十章:導入事例

事例1:自動車部品メーカー — 受入検査の厳格化と仕入先品質評価

背景と課題

自動車部品メーカーでは、複数のサプライヤーから調達する部品の受入検査が担当者の経験・判断に依存しており、検査基準・サンプリング数量・合否判定が属人化していました。顧客(自動車OEM)からIATF 16949(自動車品質管理規格)準拠を強く求められていました。

SAP QMによる受入検査の標準化

成果

事例2:食品メーカー — 工程内SPC導入と品質問題の早期検知

背景と課題

飲料メーカーの充填ラインでは、製品の内容量・pH・Brix(糖度)等の管理特性の定期測定はExcelで記録していましたが、管理外れの検知が遅れて大量不良品が発生するケースが発生していました。異常の早期検知と製造ロットとのトレーサビリティ確保が課題でした。

SAP QM SPC・工程内検査の導入

成果

事例3:医療機器メーカー — CoA自動生成とFDA 21 CFR Part 11対応

背景と課題

医療機器の製造・販売会社では、製品出荷ごとに検査成績書(CoA)の作成・顧客への送付が義務付けられています。従来はExcelで検査データを集計してWordでCoAを作成していましたが、作業工数と記載ミスが問題でした。FDA 21 CFR Part 11(電子記録・電子署名規制)への対応も求められていました。

SAP QMによるCoA自動生成とePR管理

成果

以上

SAP QM でできること ── 品質管理の主要機能と操作

SAP QM(Quality Management)は、調達・製造・出荷の各工程で品質検査を実施し、不良の早期検出と是正処置を統合管理するモジュールです。検査ロットの自動作成・使用決定による在庫ステータス制御・品質通知のワークフローなど、GxP対応にも活用される高度な品質管理機能を提供します。

▌ ①検査ロットの自動作成と検査実施

・入庫トリガー(QM in Procurement):MM入庫と同時に検査ロットを自動作成。検査計画から試験項目・規格値・サンプリング計画を自動セット

・製造トリガー(QM in Production):製造指図リリース・中間工程完了時に工程内検査ロットを自動作成

・出荷トリガー(QM in Sales):出荷指示作成時に出荷前最終検査ロットを自動作成

・QE51N 結果記録:試験項目ごとに測定値・合否を入力。規格値外は自動警告

▌ ②使用決定(Usage Decision)と在庫ステータス制御

・QA11 使用決定:検査完了後に合格/不合格/条件付き合格を判定

・合格→在庫ステータスを「制限なし」に変更(出荷可能に)

・不合格→「品質検査」ステータスのまま出荷ブロック。廃棄・返品・特採の選択

・自動仕訳連携:不合格廃棄時にFI損失計上仕訳を自動起票

▌ ③品質通知(QN)とワークフロー

・QM01 品質通知起票:顧客クレーム・工程不良・仕入先不良をシステムに記録

・8Dレポート:品質通知に連動した8ステップ是正処置プロセスをシステム管理

・ワークフロー(WF):担当者へのタスク自動通知・エスカレーション・期限管理

・CAPA追跡:是正処置(Corrective Action)・予防処置(Preventive Action)の実施状況と有効性評価をシステム記録

▌ ④SPC(統計的工程管理)

・管理図(Xbar-R・Xbar-s・p管理図):工程データをリアルタイムプロットし工程安定性を監視

・工程能力指数(Cp・Cpk)の自動算出:規格に対する工程のバラつきを定量評価

・管理限界逸脱の自動アラーム:Western Electric Rules/Nelson Rulesに基づく異常検知

・GxP(GMP)対応:医薬品・食品向けの検査記録電子化・電子署名・監査証跡(21 CFR Part 11連携)