SAP_PP解説

SAP PP(生産計画・管理)解説

Production Planning:BOM・MRP・製造指図・実績管理・能力計画・繰返製造の全解説

2026年6月

第一章:SAP PPの概要と役割

PPとは何か

SAP PP(Production Planning and Control:生産計画・管理)は、製品を「いつ・どこで・何を・いくつ・どうやって作るか」を計画し、製造現場に指示を出して、実績を記録するモジュールです。PPはMM(購買:材料の手配)・QM(品質:検査)・CO(原価:製造コスト)・SD(販売:受注情報の取込)と密接に連携し、製造業のオペレーション全体を統合します。

PPの核心機能は「MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)」です。MRPは「いつまでに何個の完成品が必要か」という需要情報から逆算し、「いつまでに何の材料を何個手配・製造すべきか」を自動計算します。この自動計算により、材料不足を人が発見してから発注するという属人的な手配業務を根本から排除します。

PPと他モジュールの統合関係

PPのサブコンポーネント

第二章:できること・できないこと

PPでできること

PPでできないこと・注意が必要なこと

第三章:マスタデータ

部品表(BOM:Bill of Materials)

BOMとは「製品を製造するために必要な材料・部品の一覧表」です。「完成品A=部品B×2個+部品C×1個+材料D×500g」のような関係を定義します。

操作イメージ:CS01/CS02 BOMの作成と変更

作業区(Work Center)

作業区とは「製造作業を行う設備・人員グループ・製造ライン」の単位です。「旋盤加工エリア・組立ライン1・検査ステーション」等が作業区として設定されます。

操作イメージ:CR01/CR02 作業区の作成と変更

作業手順(ルーティング)

ルーティングとは「製品を製造する一連の工程の手順書」です。「工程10:旋盤加工(作業区A、機械時間30分)→工程20:組立(作業区B、人工時間60分)→工程30:検査(作業区C、20分)」のような工程フローを定義します。

操作イメージ:CA01/CA02 ルーティングの作成と変更

第四章:需要計画と基本生産スケジュール(MPS)

需要の入力

MRPを動かす「需要(何を何個いつまでに作る必要があるか)」の入力源は複数あります。

MPS(基本生産スケジュール)

操作イメージ:MD40/MD41/MD43 MPS品目の計画

第五章:MRP(資材所要量計画)

MRPの仕組み

MRPは「総所要量(Gross Requirements)-現在の在庫・受入予定=正味所要量(Net Requirements)」を計算し、正味所要量分の製造指図・購買依頼を自動生成します。ロットサイズとリードタイムを考慮して所要日付の制約を守った発注点を自動決定します。

MRP計算の基本式
総所要量(需要) - 在庫 - 受入予定(発注残・製造指図残) = 正味所要量 正味所要量をロットサイズに基づいて丸め、リードタイムを差し引いた日付が「開始日(発注日)」になります。

操作イメージ:MD01N 総括MRPの実行

操作イメージ:MD04 在庫・所要量一覧(MRP結果確認)

MRPの主要パラメーター(品目マスタ:MRPビュー)

第六章:製造指図の管理

製造指図の作成と確定

操作イメージ:CO01/CO40 製造指図の作成・変換

製造指図のリリース(実行許可)

製造指図は「作成(CRTD)→リリース(REL)」のステータス変化を経て初めて現場で作業着手できます。

操作イメージ:CO02 製造指図のリリース

材料の払い出しと仕掛管理

操作イメージ:MIGO 製造指図への材料払い出し(移動タイプ261)

実績確認(工程実績の入力)

操作イメージ:CO11N 製造指図の実績確認

製造指図への入庫(完成品の入庫)

操作イメージ:MIGO 完成品の製造指図入庫(移動タイプ101)

製造指図の完了と決算処理

第七章:能力計画(Capacity Planning)

能力計画の概念

能力計画(CRP:Capacity Requirements Planning)は「MRPが生成した製造指図の工程負荷が、作業区の利用可能能力に収まるかどうか」を検証・調整する機能です。MRPは無限能力を前提とするため、能力超過(Overload)の検出と解消は別途CRPで行います。

操作イメージ:CM01/CM21 能力評価とグラフィカル計画

繰返製造(Repetitive Manufacturing:PP-REM)

繰返製造(PP-REM)は、同じ製品を繰り返し大量生産する環境(自動車・家電・消費財等の量産ライン)向けの生産管理方式です。個別の製造指図ではなく「生産ライン・日程・数量」を管理します。

PP-REMの特徴:製造指図を個別に発行しない(代わりにRSQ:Run Schedule Quantityで計画)、バックフラッシュ(MFBF)で簡単に実績入力、製造原価は「製品原価コレクター」に収集されます。

操作イメージ:MF50 繰返製造のRSQ作成と計画

操作イメージ:MFBF バックフラッシュ(実績入力)

第八章:外注加工(PP-MM連携)

外注加工の概念

外注加工(Subcontracting)は「自社の材料を外部加工業者に支給し、加工後の半製品・完成品を受け取る」形態です。PPでは製造指図の工程制御キー(PP02)で外注工程を指定します。MMでは品目カテゴリL(サブコントラクタ)の発注書を使用します。

操作イメージ:CO01+ME21N 外注加工の製造指図と発注書

第九章:End-to-Endトランザクション操作ガイド

シナリオ①:見込み生産品の生産実行(MTS)

操作イメージ:Step 1 生産計画の入力

操作イメージ:Step 2 MRPの実行

操作イメージ:Step 3 計画手配→製造指図への変換

操作イメージ:Step 4 材料の準備と製造着手

操作イメージ:Step 5 工程実績の入力

操作イメージ:Step 6 完成品の入庫

操作イメージ:Step 7 製造指図の決算(CO-PC)

シナリオ②:受注生産品(MTO)

操作イメージ:Step 1 受注の受付(SD)

操作イメージ:Step 2 MRPの実行と製造指図変換

操作イメージ:Step 3〜7 以降は同上

第十章:SPROコンフィグレーション詳解

基本設定

マスタデータ設定

MRP設定

製造指図設定

第十一章:導入事例

事例1:精密機械メーカー — MRPによる資材手配の自動化と欠品削減

背景と課題

精密機械メーカーでは、購買担当者が毎日Excelで材料在庫を確認し、不足品目を手作業でリストアップして発注していました。判断ミスによる欠品(生産停止)が月2〜3回、過剰発注による余剰在庫が常態化していました。

MRPの導入

成果

事例2:自動車部品メーカー — 繰返製造(PP-REM)導入による実績管理の効率化

背景と課題

同一品種を大量生産する自動車部品メーカーでは、月に数千本の製造指図を個別に作成・リリース・確認するという膨大な事務作業が発生していました。製造現場の実績入力も製造指図ごとに行う必要があり、入力作業が遅れて日次実績管理ができていませんでした。

PP-REMへの移行

成果

事例3:産業機器メーカー — 能力計画(CRP)による納期遵守率の向上

背景と課題

多品種少量生産の産業機器メーカーでは、生産計画担当者の勘と経験に頼った納期回答が多く、納期遅延が常態化していました。どの作業区がボトルネックかを把握できないため、有効な対策を打てない状況でした。

能力計画(CRP)の整備と活用

成果

以上