SAP_MM解説

SAP MM(購買・在庫管理)解説

Materials Management:購買管理・入荷・在庫評価・請求書照合・特殊調達の全解説

2026年6月

第一章:SAP MMの概要と役割

MMとは何か

SAP MM(Materials Management:購買・在庫管理)は、企業が必要とするモノ(原材料・部品・消耗品・サービス)を正しい品質・数量・価格・時期に調達し、入荷から在庫管理まで一元的に管理するモジュールです。MMはSAP全体のサプライチェーンの「インプット側」を担当し、PPの製造活動・SDの出荷・FIの買掛金管理・COの費用管理と密接に連携します。

MMの中核機能は「調達プロセスの自動化」と「在庫の正確なリアルタイム管理」です。MRP(PP-MRP)が計算した所要量をもとに購買依頼を自動生成し、承認・発注・入荷・請求書照合の全ステップをシステム内で完結させます。これにより紙の発注書・FAX発注・Excel管理の在庫台帳という属人的な運用から脱却できます。

MMと他モジュールの統合関係

MMのサブコンポーネント

第二章:できること・できないこと

MMでできること

MMでできないこと・注意が必要なこと

第三章:マスタデータ

品目マスタ(Material Master)

品目マスタはMMの最重要マスタデータです。「この品目をどう調達するか・どう保管するか・どう評価するか」のすべての基本設定が格納されます。

操作イメージ:MM01/MM02 品目マスタの作成と変更

仕入先マスタ(Business Partner)

S/4HANAでは仕入先マスタはBP(Business Partner)トランザクションで管理します。FIの買掛金管理とMMの購買管理が統合されたマスタです。

購買情報マスタ(PIR)

ソースリスト

第四章:購買業務フロー

購買依頼(Purchase Requisition:PR)

購買依頼は「誰かが何を買ってほしいという社内申請」です。MRPから自動生成(MD01N実行後)または担当者が手動作成(ME51N)します。

操作イメージ:ME51N 購買依頼の手動作成

操作イメージ:ME54N 購買依頼の承認

見積依頼(RFQ:Request for Quotation)

発注書(Purchase Order:PO)

操作イメージ:ME21N 発注書の作成

操作イメージ:ME22N 発注書の変更

枠契約(Outline Agreement)

第五章:入荷・在庫管理

入荷(Goods Receipt:GR)

発注した材料が届いたとき入庫転記を行います。転記と同時に「在庫増加」と「GR/IR仮勘定への自動仕訳」が生成されます。

操作イメージ:MIGO 入庫転記(移動タイプ101)

主要移動タイプ一覧

操作イメージ:MB52/MB51 在庫残高・移動履歴確認

棚卸

操作イメージ:MI01→MI04→MI07 期末棚卸のEnd-to-Endフロー

第六章:在庫評価(Valuation)

評価方法の種類と選択基準

SAP MMの在庫評価方法は品目マスタ「会計1ビュー」の「価格管理(Price Control)」で設定します。一度設定した評価方法は変更が困難なため、導入時の設計が極めて重要です。

MAP(移動平均価格)の再計算の仕組み
入庫前:在庫100個 x 1,000円 = 100,000円 新規入庫:200個 x 1,200円 = 240,000円 入庫後MAP = (100,000 + 240,000) / (100 + 200) = 1,133円 次回出庫・評価は1,133円/個で計算されます。

品目元帳(Material Ledger)と実際原価計算

品目元帳(ML)は標準価格設定品目の実際原価を期末に遡及計算する機能です。S/4HANAでは品目元帳が標準有効化されており、すべての品目に実際原価計算が適用可能です。

GR/IR仮勘定の管理

GR/IR仮勘定は「入庫済みだが請求書未着」「請求書は着たが入庫未完了」の一時的な負債を記録する勘定です。期末残高の管理が重要です。

第七章:請求書照合(MIRO)

三点照合の仕組みとMIRO操作

MIROでの請求書照合では「発注書(PO)・入庫(GR)・仕入先請求書」の三点を自動照合します。差異が許容範囲外の場合は自動ブロックされます。

操作イメージ:MIRO 請求書照合の実行

請求書照合のトラブルシューティング

第八章:特殊調達パターン

委託在庫管理(Vendor Consignment)

仕入先の在庫を自社倉庫に保管し、実際に使用した時点で買掛金が発生するパターンです。在庫リスクは仕入先が持ちます。

外注加工(Subcontracting)

自社の材料を外注先に渡し、加工後の完成品を受け取るパターンです。品目カテゴリ「L」で発注書を作成します。

サービス購買

第九章:End-to-Endトランザクション操作ガイド

シナリオ①:原材料の標準調達フロー(P2P)

操作イメージ:Step 1 MRPからの購買依頼自動生成

操作イメージ:Step 2 発注書の作成

操作イメージ:Step 3 入荷

操作イメージ:Step 4 請求書照合

操作イメージ:Step 5 支払

シナリオ②:外注加工フロー(Subcontracting)

操作イメージ:Step 1 外注発注書の作成

操作イメージ:Step 2 支給材料の払い出し

操作イメージ:Step 3 完成品の入庫とMIRO

第十章:SPROコンフィグレーション詳解

企業構造(MM関連)

価格設定(Pricing Schema)

請求書照合設定

在庫管理設定

品目マスタ設定

第十一章:導入事例

事例1:精密部品メーカー — 三点照合とERS導入による請求書処理自動化

背景と課題

月間1,200件の請求書をExcelで手動照合していた精密部品メーカーでは、照合作業に月間200時間が費やされ、過払い・二重支払いが年間数回発生していました。

MMの三点照合とERS導入

成果

事例2:食品メーカー — 委託在庫管理と在庫リスクの移転

背景と課題

季節品のパッケージ資材を多種類使用する食品メーカーでは、過剰在庫と欠品が繰り返されていました。資材仕入先との「一度購入した資材のキャンセル不可」という契約条件が、需要変動リスクをすべて自社に集中させていました。

委託在庫管理の導入

成果

事例3:化学品商社 — 外注加工フローとサブコントラクタ管理の整備

背景と課題

原料を複数の外注加工業者に委託して中間品・完成品に加工してもらう化学品商社では、外注先別の支給材料残高の把握が困難で、材料の紛失・過消費のリスクと外注加工費の請求書照合の手間が課題でした。

外注加工フローの整備

成果

以上